ハリネズミの体が揺れているように見えるときは、重篤な病気が隠れている場合があります。
今回は、ハリネズミの中でも問題となっている神経系の病気『ふらつき症候群(WHS)』について、原因や治療法、家庭内で出来るケアや対策などについて紹介します。
ふらつき症候群(WHS)ってどんな病気?
脱髄性の神経の病気で、1.5歳から2~3歳の若いハリネズミに発症することが多いといわれ、ハリネズミの約10%に起こり得る疾患です。この疾患はハリネズミ特有のもので、他の動物にはない病気です。
ハリネズミにふらつきが見られる場合は、ふらつき症候群の疑いがありますので、異変を感じたら動物病院で診てもらいましょう。また、ふらつきがあるから「ふらつき症候群なんだ」と自分で判断しないようにしてください。全てのふらつきが、ふらつき症候群であるとは限りません。
症状
初期症状 |
丸くなれない |
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後ろ足に運動失調が起こり、ふらつくようになる | |
麻痺が起こる | |
末期症状
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前足や全身に広がり麻痺が起き、筋肉が落ちてくる |
自力で食事が摂れない | |
自力での排尿や排便が困難になる |
初期症状が現れてから進行はゆっくりで良くなったり悪くなったりを繰り返し、運動失調が始まってから9ヵ月以内に自分で動くことができなくなります。多くの場合は発症してから18ヵ月~25ヵ月以内に死亡する確率が高いといわれています。
この疾患は、死後に病理解剖をして検査をしてみないと「ふらつき症候群である」とハッキリした診断を下すことが出来ない、特殊な病気です。病理解剖をしてみて、脊髄に障害があり脳や神経も影響を受けていたということが解り、そこで初めて「ふらつき症候群だった」と確定されるようです。
多くの場合は動物病院で検査をして、リストアップされた疑わしい病気を消去していった結果「ふらつき症候群だろう」という除外診断が下されるようです。
原因や見解
考えられている原因(2014年発表)
- 肺炎ウイルスの関与
- 遺伝的な要素
原因を探る研究は続けられているものの、現段階ではハッキリとした原因は分かっていないようです。また与える食事や栄養バランスなどの関与も疑われていますが、あくまで見解であるようです。特にビタミン不足は発症率が高くなると考えられています。
栄養補助剤などを使い、ビタミンを補ってあげることが予防の1つとなるかもしれません。
治療法
必要に応じて行われる治療
- 鎮痛剤やステロイドの投与
- ビタミン剤や抗生剤の投与
- 点滴
ふらつき症候群には現時点では有効だとされている治療法はありません。必要に応じて痛みを和らげるための緩和ケアや、栄養補給にビタミン剤や点滴などの治療を行います。
またQOL(生活の質)を維持するための支持療法が行われます。
家庭内で出来るケア
ケアのポイント
- 寝たきりになるので衛生的な寝床を準備する
- 食事・睡眠時は体を安定させるための工夫をする
- マッサージやストレッチをする
- 食事は少量でも栄養がとれるように高カロリーなものにする
病気が気になって何度も声かけをしてしまいがちですが、逆にハリネズミのストレスになってしまいますので、ケア以外ではそっとしておいてあげましょう。
食事や睡眠時には、体が傾いて転倒しないようにタオルやクッションを用いて安定させてあげましょう。引きずる足に外傷を与えてしまわないようにケージ内を工夫するのもいいでしょう。回し車や遊具が不要になりますので、取り外して飼育環境もしっかり整えてあげてください。
ハリネズミの体が揺れていると感じたら
ハリネズミを飼っている飼い主さんであれば、ふらつき症候群という病状については聞いたことがあると思います。ある日突然、飼っているハリネズミの体が揺れていたりふらついていたら、先ず1番にこの病気が頭を過るのではないでしょうか。
しかし自己診断は思わぬトラブルを招いてしまうので、やめましょう。後ろ足を引きずってフラフラ歩く姿を見て、ふらつき症候群だと思ったら、「怪我をしていた」「ヘルニアだった」「低体温・低血糖だった」ということがよくあります。治療が確立していない病気だからと諦めて放置しておくのは危険です。
そして個人的な意見ですが、ふらつき症候群は言い変えてみればまだよく分かっていない病気ですので、良くなる可能性もあると信じて、希望を持って治療やケアをしてあげて欲しいと思います。
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